バンコクを歩いていると、私はいつもうつむいてしまう。
日中歩道を歩いていると、スコールでもないのに軒先から水が頭に滴ってくる。雨でもないのに歩道は数メートルごとに水たまりができている。
これは何かというと、エアコン室外機の排水だ。年がら年中、たいていの日中、暑くて外に出てられないのでエアコンは回りっぱなし、通行人にお構いなし、どこもかしこも水浸し。はた迷惑なバンコクの流儀だ。
結果的に濡れたくないので、常にうつむいて路面の水たまりを見て、どこに滴りが落ちるか常に察知して歩かざるを得ない。
そうやってうつむいてバンコクを歩いていると、歩道の舗装のそこかしこに足跡を見つける。
まだある。
これでもかとある。
さすがにこの辺まで来ると、わざとやってる疑いすらある。
犬の足跡まである。
極めつけは落ち葉の跡。もはや示相化石である。
なぜこうもタイ人は足跡を残すのか?
色々考えてようやく?答えに至った。
タイの工事現場は基本的に柵囲いをしない。作業途中でもほっぽり出すし、資材もその辺に放置する。無論コンクリが生乾きであろうと、注意喚起なぞする気がない。加えてロクに歩道の修繕もしないものだから、平常状態と工事現場の区別がほとんどつかない。そうなると人はズカズカと生乾きのコンクリにも足を突っ込む。
きっとこれが足跡の原因だ。
濡れたくないから、コンクリに足を突っ込みたくないから、私はこれからもうつむいてバンコクを歩く。